記事一覧

目利きのポイント 償還能力

期間一〇年超の融資は、企業の償還能力が乏しいことの証左

長期性資金の融資判断においては、融資先企業の償還能力を適切に判定しなければならない。すなわち、企業が将来獲得できる償還財源(税引後当期利益+減価償却費-社外流出)によって要返済債務を償還するにはどの程度の年数を要するか、その償還財源たるキャッシュフロー創出の確実性はどの程度のものか、キャッシュフローの創出見込みに狂いが発生した場合に別途の償還財源造出策(遊休資産の売却、増資、借換えなど)を検討できる余地があるか等の点について検証を行うことが必要である。資金使途が設備投資の場合には、設備が稼働後に新たに獲得できる償却前利益や当該設備の耐用年数、補修や追加投資の見通し等を検証する。

ホテルなど装置産業の大型投資案件においては、一般の長期融資よりさらに長い償還年数を要することになるので、補修準備金積立や追加投資等の余力を確かめなければならない。有価証券投資等については、その投資リスクを見極める必要があるし、長期運転資金の融資に際しては、実質的な資金使途を吟味しなければならない。赤字資金など後向きの使途が隠されていることが多いからである。償還に要する年数が長ければ、長期融資の信用リスクはそれだけ大きくなる。一般的に、事業性長期資金融資の適正な償還年数は五年から七年程度、長くとも一〇年であろう。金融検査マニュアルにおいても、経営改善計画が合理的で実現可能性が高いと判断される計画期間の基準はおおむね五年を原則とし、計画の進捗状況が順調である場合にはおおむね一〇年間以内の計画であってもこれを認めるとされている。

企業の先行きを合理的に予測できる妥当な期間は、せいぜい一〇年間ということであろう。したがって、装置産業等に対する融資や超長期にわたるプロジェクト・ファイナンスのようなケースを除いて、償還年数が一〇年を超えるような長期融資案件は、融資先企業の償還能力が不十分ということになる。かつてバブル期には、「一〇〇年ローン」と称して、金利さえ支払えば返済期限を定めない融資を売物にしたノンバンクがあった。いざという場合は担保不動産を処分すれば回収できるという目論見であったが、担保価額が下落して巨大な損失を被った結果、あえなく倒産してしまった。金融機関の顧客にも、金利さえ支払っていれば返済を迫る必要はないではないかと主張する経営者がいるが、「返済されてこその融資」であるから、それには応じられないのである。