記事一覧

目利きのポイント ROA

使用総資本事業利益率をROAとして用いる

企業についての目利きを進めるうえで損益状況の分析(収益性分析)は欠かせない。この分析を通じ、企業の収益力(収益水準、安定性、収益構造)を判定し、収益の将来予測のための因子・法則性などを探るのである。それにはまず、財務実態を調査する。財務諸表における利益調整や粉飾を消去・修正し、実質期間損益、実態P/L、実態B/Sを作成する。次に、実質期間損益、実態P/Lのこれまでの推移比較から、各決算期における収益の変動要因を探る。それが外部要因または内部要因によるものか、一過性か構造的なものかなどを明らかにして、収益の安定性を評価する。そして収益力の水準を診る。その場合は、資本利益率を用いることが有効であり、それをさらに資本回転率(効率)と売上高利益率(利幅)に分解して、収益の多寡と投下資本との十分性およびその要因を検証する。

最後に、損益分岐点分析や生産性分析を補助ツールとして、現状の収益力を構成している要素を探り、収益の基本構造を診る。収益性分析を効率的に行ううえでの有効なアプローチは、使用総資本利益率(ROA)を用いる方法である。ROAにはいくつかの態様があるが、金融機関の立場からは使用総資本事業利益率が最適であろう。この場合の分子となる「事業利益」とは、本業の利益である営業利益に金融資産から生ずる受取利息・配当金を加えたもの、B/Sの貸方から発生する調達コストを負担する直前の利益であり、事業が生み出すキャッシュフローの総量であるEBITDAにおおむね等しい。

このROAを、前述のように使用総資本回転率と売上高事業利益率とに分解して検証することにより、現状の収益性を規定している要素を具体的に明らかにすることができる。ROAを用いた収益性評価の手法としては、ベンチマーク(全産業平均など客観的指標)との比較、過去数期間にわたる比率の推移傾向と水準値の検証、国債利回りとの比較(ROAが国債利回りより低ければ、リスクある事業に資本投下する意味がない)、負債利子率との比較(ROAが負債利子率より低ければ、事業がジリ貧になっているおそれがある)などがある。